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因果関係を結論するのは慎重に

経済変数の間に因果関係はまずあり得ない、といっても過言でない。
因果関係は内生変数の間に存在しないからだ。

経済モデルの変数は内生変数と外生変数に分けられる。
外生変数は内生変数から独立しており、内生変数の影響を受けない。
内生変数は外生変数の影響を受けるし、内生変数相互に影響し合う。
経済にとって外生変数は自然環境と人々の嗜好ぐらいなもので、
そのほかは殆ど全て内生変数だ。
たとえば、大震災の発生は外生変数であり、為替相場は内生変数だ。
財政支出額とか政策金利といった政策変数は外生変数として扱われることもあるが、
よくよく考えると政策担当者や圧力団体や有権者の嗜好といったものが本当の外生変数であって、
政策変数はその影響を受ける内生変数だったりする。
経済指標の類はだいたい内生変数である。

因果関係は外生変数と内生変数の間にある
外生変数が原因で内生変数が結果だ。
「大震災が発生したので円高が進行した」という言明は、
真偽はともかく因果関係としてあり得る。
ところが「インフレ期待が高まったので円安が進行した」という言明は、
真偽以前に因果関係としておかしい。
インフレ期待も円相場も内生変数だから、相互に影響を及ぼし合うのであって、
一方から他方への因果関係を想定すること自体がナンセンスなのである。

繰り返せば内生変数の間に因果関係は存在しない。

経済変数は殆ど内生変数だから、経済変数間に因果関係はまずない、と言っても過言ではない。

とはいえ、因果関係は人の脳に理解しやすいスキーマである、ということも事実である。
したがって、説明のアート、レトリックとして、因果スキーマを使う人もいるだろう。
もっとも、内生変数間を因果関係で説明するのは本当は嘘なのだから、
誠実なレトリックとは言えない。
嘘を覚悟して使うなら構わない。嘘も方便だ。
しかし、一番大事な結論で嘘はマズいだろう。
経済変数間に因果関係を想定するのは、だいたい嘘なのだ。

そもそも因果関係なるものは、人間が勝手に想像しているものに過ぎない。
想像とはいえ役に立つ想像だから意味があるのである。
経済問題で因果関係を結論するのはだいたい嘘であり、
嘘を見破られると説得力がない。
したがって役に立たない。センスがない。

経済問題で因果関係を匂わす結論は慎重にしよう。
これが戒めである。

因果関係であっても外生変数に原因を帰するのは結構だ。
しかしそうした因果関係はそれほど多くない。
「天候不良のため新鮮野菜の価格が上がった」は
真偽はともかく因果関係として許される。
「消費者の時間選好率が高まったから一時的にGDPが増えた」も
許される。
しかし、「消費が増えたらGDPが増える」は
因果関係として明らかにマズい。
このほか因果関係として明らかにマズい例は
「円安になったから景気がよい」
「インフレになれば日本経済は復活する」
「購買力平価が為替相場を決定する」
等々。
いずれも因果関係がありそうな気分になる。
しかし因果関係はただの気のせいだ。